多くの人は日頃から少なからず、
誰かとコミュニケーションをとっているのではないでしょうか。
家族や恋人、上司や部下・同僚などと、
食事の話、子供の話、旅行の話、仕事や友人の不満や愚痴、
お互いにそれらを伝え合い、言葉のキャッチボールをしています。
これらを会話といい、コミュニケーションをとる手段の一つです。
あなたは相手のことを受容できていますか?
「昨日、上司から理不尽に怒られて、頭にきて文句言ってやったよ」
「だめじゃない!上司に文句言ったら!そんなことしたら会社クビになっちゃう!」
と返した場合は、
相手は受け止めてもらえたと感じないものです。
受容することができると、
相手は『あ、この人なら自分のことを受け止めてくれるんだ』と、
信頼してくれるようになります。
結果、円滑なコミュニケーションを取ることができ、
恋人、夫婦関係、ビジネスパートナーなど、あらゆる人間関係においてプラスに働きます。
なぜなら、受容とは、相手の言葉や感情などをありのまま受け止めること。
先ほどの例で言うと、
理不尽に怒られたことで頭にきたことについては、
しっかりと相手を受け止めてあげることができますよね。
しかし、上司に対して文句を言うのは、良い行動とは言えません。
例えば、
「うんうん、そうだよね、理不尽なこと言われると腹が立つよね。」
と、このように、受容とは、
相手の怒りをも受け止めることです。
つまり受容とは、相手の言葉、感情などを、
自分の価値観で批判したり評価をしたりせず、
そのまま、ありのまま受け止めることです。
そのためには、100%相手の味方になることが必要です。
100%相手の味方になるということは、
相手を絶対に拒否しないということです。
相手からどんなことを伝えられても、
拒否せず、いったん受け止めることが重要です。
私たちは誰かから話を聞くと、
聞いたことに対して評価やアドバイスをしようとしたり、
相手に議論を仕掛けたくなったりします。
会社で部下を評価する時は自分を軸にして、
部下のマイナス点を探してしまいがち
上司は100%部下の味方になって、ありのままを受け止めることができなければなりません。
INDEX
受容的な態度で聴く
相手の話を聴くときには受容的な態度で聴きます。
受容的な態度とは、
キャッチャーミットのように、
どんな球が飛んできてもしっかりと受け止めることです。
相手が話しているときに途中で意見を挟まないで、
「ああそうか」「なるほど」などと最後までしっかり聴くことが大切です。
そのためには、次の3つのことを心がけましょう。
自分の評価や判断を入れない
自分の評価や判断を入れずに、ニュートラル(中立)な気持ちで相手の話を聴きます。
コーチ自身が、自分の思い込みや固執した考え方をしていないかに注意することが大切です。
精神的ゆとりを持つ
コーチ自身が精神的ゆとりを持ち、安定感のある状態を維持していることが大切です。
聴き手であるコーチ自身の体調が悪く、イライラ、怒り、不安感を抱えている状態では、
相手の話を聴くことなどできません。
自己中心的な考え方をしない
自己中心的な考え方をしていないかに注意しましょう。
自分には力がある、相手から凄い人だと思われたいなどと思っていないか、
自分と対話してみましょう。
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比較される言葉で『許容』があります。読んで字のごとく、許して容認するという意味ですが、おそらく多くの方は許容することが多いのではないでしょうか。違いをまとめてみました。
受 容 | 許 容 | |
意味 | 他者や状況をそのままの姿で認め、心から受け入れること。 | 特定の行動や状況を認めはするが、必ずしも賛同や完全な受け入れを意味しないこと。 |
心理的側面 | 受容は、相手に対する深い理解や共感を伴い、心からの受け入れを含む。 | 許容は、ある程度の距離感や保留の態度を保ちつつ、許すことを意味することが多い。 |
適用例 | 友人が自分とは異なる意見を持っていたとしても、その意見を理解し、その人として尊重する態度。たとえば、「友人が好きな音楽ジャンルが自分とは全く異なるが、その趣味を楽しむ彼らを心から理解し、喜びを共有する」など。 | 職場で同僚が自分のやり方とは異なる方法で仕事を進めている場合、その方法を必ずしも最適だとは思わないけれど、仕事が進むならばと一定の範囲で受け入れる態度。たとえば、「同僚が文書を整理する方法には賛成できないが、結果として業務が滞らなければ、その方法を容認する」など。 |
共感して寄り添う
心理学者のアドラーによると共感とは、
相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じること」
心理学者アルフレッド・アドラー
と定義しています。
つまり大事なことは、
・相手の目で見るとどう見えるのだろうか、
・相手の耳で聞くとどう聞こえるのだろうか、
・相手の心で感じるとどう感じるのだろうか。
ということです。
共感するというのは、相手との共通点を見つけることではありません。
相手の話を聞いて一緒に笑ったり、
泣いたりすることでもありません。
相手が話したことについて、
心から「そうだね」という気持ちを表し、
あなたと一緒だからねと伝えることです。
相手の気持ちに寄り添って、
相手の存在を実感する必要があります。
ベンチで相手と二人で同じ方向に向かって座っているイメージ。
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共感的理解と同情の違い
共感的理解とは、
相手の心の基準で相手の言葉を理解するように聴くことです。
一方、同情とは、
相手に身の上になりその感情を共有することです。
共感的理解も同情も相手に対する温かい心配りであり、援助的な心理作用です。
しかし、共感的理解と同情は相手に対する理解の基準が異なります。
共感的理解では相手の心の基準で相手の言葉を理解し、
同情は自分の心の基準で相手の言葉を理解しようとすることです。
大切なことは相手が理解されていると感じること。
つまり、
コーチが理解したと思うことではなく、
相手が理解されていると感じることです。
本当に相手の気持ちを理解してますか?
こんな経験はありませんか?
あなたは同僚から相談を受けたとして同僚の話を聴いてあなたはこう返しました。
「うんうん、あなたの気持ち、わかりますよ」と。
しかし、同じ体験をしていないかぎり、
本当の意味でわかることは難しいでしょう。
相手が「辛いんだ」とか「落ち込んでいるんだ」
という話をした時、相手を励まそうとアドバイスしようとして、
「あまり深刻に考えない方がいいよ」などと言ってしまいがちです。
自分なりに、おもいやり勇気づけているつもりになっていますが、
相手は「この人には言ってもムダなのだな」と感じて傷ついたりしているもの。
では、どう聴いたら良いでしょうか?
ポイントは相手の気持ちに寄り添い、
「辛いと感じているのですね」などと、確かめるように聴くこと。
本当の意味で、共に通じ合っている感覚です。
そのためには、
「この人だったら信頼できる」
「この人とは心が通い合っている気がする」
と感じてもらえるような信頼関係を作ることが必要です。
子どもや部下が落ち込んでしまっている時にも、
「グシグジ言っていないで、こうした方がいいに決まっているよ」と断定しがちです。
しかしながら、こうした価値観の押し付けは避けた方がいいでしょう。
「辛いね。良かったら話を聴くよ。」
と「辛いね」という共感から始まるコミュニケーションが必要です。
価値観ややり方を押し付ければ、
表面的には「そうですね」と言うかもしれません。
しかし内心ではそれに反発し否定的な気持ちになっているものです。
人は結局のところ、
自分自身が導き出した結論によってしか行動を起こしません。
傾聴がビジネスにもたらす3つの効果
傾聴がビジネスに与える影響はさまざまです。ここでは3つの効果について紹介します。
話し手が整理できる
傾聴を行うと、
話の聞き手が特別なアドバイスを行わなくても、
話し手が自らの心情や意見を整理できます。
人はさまざまな意見や悩みを持っていますが、
具体的に言葉として表現できるレベルの考えもあれば、
まだ人に伝わる程度にはまとまっていない考えもあるものです。
それを自力で言葉にし把握するのは簡単ではありません。
傾聴することで、
そのプロセスの中で話し手は自分の考えを何とか相手に伝えようとして言葉化し、
それを口に出すことで自分の本当の心情や意見に気付くことができます。
これを繰り返すことで、
徐々に考えや感情が整理でき具体的な行動に移れるようになるのです。
信頼関係を築ける
傾聴は信頼関係の構築にも役立ちます。
傾聴を意識しないコミュニケーションでは、
聞き手が相手の話を何となく聞き流したり、
関心のあることだけを熱心に聞いたりするといったケースも珍しくありません。
偶然にも興味関心が一致するなら心を開ける可能性はありますが、
そうでなければ信頼関係の確立には至らない可能性が高いでしょう。
傾聴では、
聞き手は話し手の立場になって考え、
否定や疑問を挟まずに相手の話したいことに共感しようと努めます。
話し手は
「理解されている」「共感されている」
といった肯定的な感覚を得られるので、心を開くことにつながるのです。
仕事がスムーズに進む
傾聴は仕事の効率にも良い影響を与えます。
ビジネスでは、
お互いへの理解不足や信頼関係が構築できていないことが
理由となって仕事がスムーズに進まないというケースが珍しくありません。
例えば、
相手の伝えたいことを誤解してしまったり、
上手く言語化できないために発言意図を汲み取り切れなかったり・・・
といったような経験、おそらく、あなたにもあるのではないでしょうか。
傾聴では、徹底的に相手の意見や考えに耳を傾けることで深い理解に努めます。
時には効果的に質問を挟むことで、
話し手の言いたいことを引き出すことも技法の1つです。
コミュニケーションが深いものになり、円滑に仕事を進められるでしょう。
※ビジネスコミュニケーションを効果的にするためのツールや情報をお探しの方は、
当ブログ内のこちらの記事をご覧ください。
まとめ
ニュートラルな気持ちで人の話を聴けるようになるためには、
自分にどんな傾向があり、どういう時に反論や批判、怒り、イライラが生じてしまうのかなど、
自分自身の性格や行動特性を客観的に観ることができるようにしておくことが望まれます。
己を知り、理解して、はじめて相手を理解し敬うことができるようになります。
相手の言葉の意味を聴くだけではなく、
真の想いや感情を聴き取るためには、
まず相手を心から理解しようと思うことが必要。
「自分は相手のことを知らない、心の変化を見逃しているかもしれない」
と思うことが出発点です。
そのうえで、
『相手の存在そのものを心から受容する』ことが大切です。
「彼(彼女)のことならわかっている」と思う傲慢な気持ちを持っていると、
相手の心に起こっている微妙な変化を見逃してしまいます。
『受容する』ということは、
相手の感情のすべてに自分が同意することではありません。
仮に自分と相手の価値観が大きく異なっていても、
その違いを乗り越えて相手が存在することをしっかり認め、
その中で新しい関係性をつくっていくことが『受容』です。
『受容』した後に、『共感』することが大切。
あなたが受容できるようになると、必ず周囲の空気が変わります。
最初は小さな変化だったとしても、
あなたが周囲に及ぼす影響はとても大きなものへと変わっていきます。
『なんか、この空気感いいよね』
と思ってもらえる、そんなコミュニケーションをとれると、
あなたや周りの人たちの人生はより豊かなものになることでしょう。
周囲を変えるのではなく、まずはあなたが変わることからはじめてみませんか?